父、脳梗塞になる②

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「面会は平日の15分間だけだけど、遠目から会わせてくれるって。」
温かい病院の恩恵に感謝と寂しさを抱えつつ病院についた。

土曜日の病院は静かだった。
静かだけどお見舞いに来た家族が数名いたり、館内を歩く患者さんが数人おり、
「しばらくここでお待ちください。」父のいる脳神経外科は、誰かの転院作業に追われていた。

父のいるフロアは八階。デイルームからは諏訪湖の景色が広がっていた。
母と「諏訪湖の藻について」など他愛ない会話をしていると、看護師さんに連れられて、車イスに乗った父が来た。

母と私は仰天。
「え?(面会)いいんですか?」
今回は特別だと言いながら、父の車いすを私達の目の前に止め、「15分程してから戻りますね」
と静かに去っていってくれた。 

父に会えた。

父は私を見ると、動く右手を伸ばして握手を求めた。

ーーーーー感情が溢れた。

父の膝元に崩れ、子どものように泣きじゃくった。『半身不随で動けなくなった父』というより、『こんなにも幸運が続いた父』という姿が残っている私は、ひたすら泣きながらに「幸運だった点」を述べた。

自分から不調に気付いてよかったね。
保健室の先生(父は小学校の教員)がすぐに救急車を呼んでくれてよかったね。
救急車がドクターカーでよかったね。
血管が太くてよかったね


父は決して目を離さず、何度も「ありがとう」と言っていた。

その後も時折会話にジョークを混ぜたり、孫たちからの手紙にもクスリと笑う姿もあった。
思ったよりも会話ができ、昔の記憶もすんなり出て、昨日母が面会をした時よりも意識がはっきりしていたようだ。顔を合わせる力って凄いな。

おそらく十年前にハイタッチして以来触れていない父の手の温もりを感じながら、帰りの車に揺られた。あんなにも苦手としていた父にすんなりと触れられたこと、あんなにも号泣してしまったことに驚きつつ、心からは不安は取り除かれ、父の回復を強く信じ、行きよりも私は前を向いていた。

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