普段の生活に潜む大きな危険。
ちょっとした気の緩みから事故が発生し、子どもがケガで入院したり、取り返しのつかないことになることも。
今回は注意喚起を込めて、育児中・保育中に多い事故、そして気をつけるポイントをお伝えしていきます。
油断した時に発生しやすいので、こちらの記事を見返し、身を引き締めて安全な育児や保育を行いましょう!
ケース①:抱っこひもから子どもが転落
事例 1 (4ヶ月 女児)
抱っこひもで前抱っこしている状態で、駅でカバンから財布を取り出そうと前かがみになった時に、赤ちゃんが右わきから滑り落ち、地面に頭をぶつけてくも膜下出血を起こした。
事例 2 (1ヶ月 男児)
抱っこひもの留め具を付け替えようとしたときに、抱っこひもの横から子どもがすり抜けてフローリング床に落下し、前頭骨を骨折した。
事例 3 ( 5ヶ月 男児 )
子どもを抱っこしようと、抱っこひもを装着している途中に、テーブルの上の物を取ろうとしたら、子どもが動いて高さ80センチのテーブルに頭をぶつけ、その後床にうつ伏せに落ちた。
★気を付けるポイント:
●12カ月未満の子どもに多く、特に4カ月以下では入院を必要とする重症事故が多く発生しています。
●抱っこひもをしたまま前にかがむときは、子どもを必ず手で支え、落ちないように抑えましょう。
●抱っこひもを使用する際は、ひもの緩みやバックル類の留め忘れがないかなどを必ず確認しましょう。
●抱っこひもでおんぶや抱っこをするとき、降ろすときなどは必ず姿勢を低くして行いましょう。
一口メモ:正しい抱っこひもの装着の仕方
ベビーウェアリング協会さんのパンフレットより
ケース②:子どものベランダや窓からの転落事故
事例 1 (3歳 男児 )
自宅マンションの1階にあるポストを見に行った約1分の間に、子どもが3階のベランダから転落した。当日は、ベランダへ出る窓は閉めていたが鍵はかけておらず、ベランダの柵の下には台や植木鉢を置いていた。救急要請し、肝臓損傷の疑いで7日間の入院となった。
★気を付けるポイント:
●ベランダや窓のある部屋には、短時間であっても小さな子どもだけにしないようにしましょう。
●子どもは、何でも踏み台にして登れそうなところには登ってしまいます。ベランダの手すりや窓の近くには、子どもの足掛かりになるようなものは置かないことが大切です。特に、エアコンの室外機の置き場所は工夫しましょう。
●勝手に窓を開けないよう、窓や網戸には子どもの手の届かない位置に補助錠を付けましょう。
●窓枠や出窓に座って遊んだり、窓や網戸に寄り掛かったりさせないようにしましょう。
●日ごろからベランダや窓からの転落の危険性について子どもに教えることも大切です。
ケース③:子どもが洗剤や液体芳香剤を飲んだ
事例 1 (1歳 男児 )
トイレに置いていた液体芳香剤を誤飲した。3回吐き、激しくせき込んだ。その後、熱 が 出 て、呼吸が速くなった。翌日病院に行ったら化学性肺炎と診断され2週間入院した。
胸部CTにて、肺の一部が空洞のようになっている箇所がみられ、治るかどうかは不明である。
★気を付けるポイント:
●洗剤や液体芳香剤は、乳幼児の手や目が届かない場所で使用・保管しましょう。
●洗剤や液体芳香剤の液は、気管に入ると化学性肺炎を生じる危険があります。誤飲しても慌てて吐かせずに、商品名と飲んだと思われる量を確認し、すぐにかかりつけ医や中毒110番等に相談しましょう。
●洗剤や液体芳香剤の液が目に入った場合は、すぐに流水で洗い流しましょう。皮膚に付いた場合は、かぶれるおそれがあるので石けんなどでよく洗いましょう。
ケース④:蒸気が出る家電でやけど
事例 1 ( 9カ月 女児 )
寝室にある熱い蒸気が出る加湿器の電源を入れて、ドアを開けていた。
子どもが寝室に入ってきて、蒸気の出口に手を突っ込み泣いた。手の指にやけどを負った。
事例 2 ( 1歳2カ月 男児 )
女児炊飯器をキッチンにある高さ60~70センチの引き出しの上に置いていた。普段は キッチンの柵をしているが開いており、子どもが炊飯器の蒸気口に両手を置き泣いていた。母親が泣き声で気付いたが、やけどを負い24日間入院した。
★気を付けるポイント:
●消費者庁や独立行政法人国民生活センターが収集している医療機関からの事故情報によれば、令和2年(2020年)12月までの約10年間に、炊飯器や電気ケトルなどによる2歳以下の乳幼児のやけど事故は計333件、グリル付こんろによる乳幼児のやけど事故は計50件が確認されています(※)。そのほかにも、カップに入った飲み物をこぼしたり、加湿器やストーブなどの暖房器具に触れたりなどして、合わせて約2,000件のやけど事故が起きています。
●炊飯器、ポット、ケトル、スチーム式の加湿器などの家電から出る蒸気は、蒸気口では100度近い高温になっている場合があります。高温の蒸気は数秒触れただけでやけどを負う恐れがあるため大変危険です。
●蒸気が出る家電を使う際は、乳幼児の手が届かない位置に置きましょう。
●蒸気レス、蒸気カット、蒸気セーブなどの高温蒸気への対策機能が表示された家電もあります。蒸気によるやけどを防ぐために、これらを選ぶことを積極的に検討しましょう。
やけどした時の対応
やけどは初期の対応と治療が大切です。もしも、こどもがやけどをしてしまったときは10分以上冷やしましょう。刺激を避けるため、容器に溜めた水で冷やすか、水道水・シャワーを直接当てないようにしましょう。服の上から熱湯などがかかった場合は、脱がさずに服の上から冷やしてください。
- 全身の広い範囲・顔面などのやけどの場合: すぐに救急車を呼びましょう。
- やけどの範囲が片足、片腕以上の広範囲にわたる場合: 救急車を呼ぶか、至急病院を受診しましょう。
- やけどの範囲が手のひら以上の場合や水膨れの場合: 潰さないようにして、病院を受診しましょう。
※市販の冷却シートは、やけどの手当てには使えません。電気カーペットなどによる低温やけどは、見た目より重症の場合がありますので、症状が悪化したり、こどもが痛がることが続いたりなどした場合には病院を受診しましょう。
ケース⑤:子どもが車内に閉じ込められてしまった
事例 1 ( 1歳 男児 )
駐車場で車の鍵を車内に置き忘れたまま外に出たところ、何らかの理由でドアがロックされ、1歳の息子が車内に閉じ込められてしまい、救急要請した。軽度の熱中症にかかってしまった。
★気を付けるポイント:
●子どもが自分で車内側から鍵をかけてしまったり、車の鍵で遊んでいてロックボタンを押したり等で施錠され、子どもが閉じ込められてしまうことがあります。
●特に、夏場の車内は短時間で高温になります。子どもが車内に閉じ込められると、熱中症となる危険があります。子どもを車内に残して絶対に車を離れてはいけません。車を降りる際は、乗り降り等の少しの間であっても忘れず鍵を持って降りましょう。
●車の年式や車種によっては、電子キーの電池が切れることにより施錠される場合もあり
ます。電池が切れた際の解錠方法を、取扱説明書で確認しておくことも大切です。
子どもがクラクションを鳴らす方法
警視庁では、もしもの時のために子供にクラクションの鳴らし方を教えています。力の弱い小さな子供でも簡単に鳴らせた方法を紹介します。小さなお子さんがいる方は、試してみてはいかがでしょうか。
ケース⑥:食品による窒息事故
事例 1 ( 0歳10カ月 男児 )
薄くスライスしたリンゴを自分で持たせ、食べさせていたところ、えずいて顔が真っ赤になった。苦しそうな様子が続き、嘔吐した。
事例 2( 2歳 男児 ) バームクーヘンを食べさせたところ、のどに詰まらせた。当時親が近くにおらず、発見が遅れて一時心肺停止になり、低酸素脳症になった。
★気を付けるポイント:
●2014~2019年までの6年間で80人以上が死亡しています。そのうち5歳以下は73人でした。
●乳幼児は食品をかみ砕く力、飲み込む機能が未発達です。
●窒息事故を防止するため、食べ物は小さく切ったり、形態を変えたりした上で、よくかんで食べさせましょう。
●寝転んだ姿勢や、口に入れた状態での遊びやおしゃべりは危険です。正しい姿勢で座らせ、食べることに集中させましょう。
★一口メモ:窒息した時の対応
窒息が起こってから、3~4分で顔が青紫色になり、5~6分で呼吸が止まり、意識を失います。そして、心臓が止まり、大脳に障害が起こり、さらに15分を過ぎると脳死状態になります。
窒息に気づいたら、すぐに救急車を呼び、救急車が来るまでの間、詰まったものを吐き出させるための応急処置をすることが非常に重要です。
子供がものをのどに詰まらせたときの応急処置
子どもが実際にのどに詰まらせてしまった時の対応を紹介します。のどに詰まらせてしまった場合は迅速な対応が必要です。年齢によって処置の方法は異なるので覚えておきましょう。内容と画像は政府広報オンラインからお借りしています。
(1)背中を叩く(背部叩打法)
片手で乳児の体を支え、手のひらで乳児のあごをしっかり支えながら、もう一方の手のひらのつけ根で乳児の背中をしっかり叩きます。(5、6回を1セット)
(2)胸部を圧迫する(胸部突き上げ法)
乳児をあお向けにし、片手で乳児の体を支えながら手のひらで後頭部をしっかり押さえ、心肺蘇生法と同じやり方で胸部を圧迫します。(5、6回を1セット)
乳児の様子を見ながら、(1)と(2)の対処法を交互に繰り返してください。体位を変えることで、のどに詰まったものが出やすくなる効果があります。
(3)腹部突き上げ法(ハイムリック法) 1歳児以上の場合
背後から両腕を回して、片方の手を握りこぶしにし、子供のみぞおちの下に当てます。もう片方の手をその上に当てて、両手で腹部を上に圧迫します。これを繰り返します。
まとめ
いかがでしたか?
まだ危険回避能力がなく、好奇心旺盛な子どもは事故に繋がる行動を起こしがち。目が離せずに大変だとは思いますが、親自身、保育士自身が代わりに危険から遠ざけてあげることで安心して世界を探索出来ます。特に育児中は家事も同時並行で行うので目を離すこともあると思いますが、子どもの手の届く範囲に危険なものは置かない、これを徹底するだけでも違います。子どもが自分自身で危険回避能力ができるまでのたった数年です。「まぁいっか」と言う不注意が子どもを重症なケガを負う原因になりますので、身を引き締めていきましょう。
参考文献:
・独立行政法人国民生活センター
・政府広報オンライン
・こども家庭庁「こどもの事故防止ハンドブック」
コメント