「そろそろテレビ終わりにしたら?」
声を掛けても返事はなく、視線はずっとテレビのまま。
親が子どもに話しかけると、子どもは時折「聞こえないふり」をすることがありますよね。
返事がない…つまり聞こえてないのかもしれないけど、同じ声量で「おやつ」と言えば即反応。
まぁ都合のいい耳だこと。
呆れ半ばに何度も続くとイライラしてしまいますよね。なぜイライラするか、理由は3つ。
- 反応が得られないストレス:声を掛けても相手が反応しない、もしくは期待した反応が得られないと無視されたように感じたり、コミュニケーションがうまくいっていないというストレスが生まれます。
- 繰り返しの労力: 同じことを何度も伝えるのは時間と労力を消費します。そのため繰り返し声を掛けることが面倒に感じてイライラします。
- 期待と現実のギャップ: 相手に何かを期待して声を掛ける場合、期待した結果が得られないと、そのギャップに対して苛立ちを覚えます。
子どもはなぜ聞こえないふりをするのでしょうか。発達段階によって聞こえない仕組みがあるのでしょうか。
どうしたら口うるさく言わなくてすむか、対策を含め調べてみました。
「聞こえないふり」?それとも「聞こえてない」の?声が届いてない理由を調べてみた
果たして聞こえないふりをしているのか、もしくは本当に聞こえていないのか。これは当の本人にしかわかりません。
しかし、声が届きずらい特徴は性別や成長段階でも違いがあるので見ていきましょう。
声が届きずらいのは、男女どちらが上?
まず、男の子と女の子で違いはあるのか。
答えは「あります。」
男の子の方が話を聞けないんです。
理由は男の子は脳の言語野の発達が女の子より遅いから。
男の子は身体を自在に動かすための神経系統の形成に忙しく、言語の受容と連合野がまだうまく結びついていません。子どもの3-10%に聴覚障害があるのですが、なんと男の子は女の子の2倍の発症率だとか。なるほどね。
まさかの軽微難聴の可能性
あれ?そしたら我が子も聴覚障害だったりする?聴覚障害にはどんな特徴があるか見ていきましょう。
軽度難聴の人の場合、静かに話している人の声(30dB付近)や小さな音が聞き取りにくいことがあります。一方で、普通の声で話す(50~60dBくらい)場合は問題なく聞き取れることが多いです。
つまり、小さめの声や遠くからの声が聞き取りにくく、実際「声は聞こえても、ことばとしてはわかりにくい」ということですね。
軽度難聴の子どもの特徴としては、
・会話の中で、反応がない、または聞き返してくることがある。
・ささやき声で話すと、わからないことがある。
・状況に合わない大きな声、または小さな声で話すことがある。
などがあるようです。
心配な方は受診しても良いかと思います。
また、こちらのサイトでは無料でセルフチェックができます。心配な方は参考になさってください。
▼子どもの聞こえ相談ネットワークをつくる会
http://kodomonokikoe.net/check
発達によってちがう?「声が届きにくい」成長段階による違い
では続いて成長段階での違いを見ていきましょう。我が子はなぜ声が届きずらいのか、どんな対策があるのか見ていきます。
成長段階は乳幼児期(0~2歳)、幼児期(3〜5歳)、学童期(6歳以上)と分けて調べてみました。
乳幼児期(0~2歳)
幼少期の子どもは周りの世界に対して非常に好奇心旺盛で、注意力も散漫になりがちです。
この時期子どもに声が届かないのは、単に他の何かに気を取られている可能性があります。また、言葉や指示の理解がまだ完全ではないため、親が何を求めているのかを理解できずにやり過ごしていたことも考えられます。
対策:
3歳までの子に対しては視覚的に注意を引くことが効果的です。例えば、目を合わせたり手を握ってから話しかけたりして、視覚と触覚で注意を促します。また、短くてシンプルな言葉選びもポイントになります。
幼児期(3~5歳)
3歳以降になると自我が自我が確立し、自分の意思を表現する力が強くなります。子どもが「聞こえないふり」をする理由には、親からの指示に対する抵抗や、自分の考えを優先したいという気持ちが含まれることがあります。また、遊びに夢中になっている場合も、「聞こえないふり」をしてしまうことがあるでしょう。
男女の違い:
この年齢になると、男の子と女の子で「聞こえないふり」をする理由に違いが見られることがあります。男の子は、より物理的な活動やゲームに集中する傾向があり、その結果親の声が届かなくかることがあります。
一方で、女の子は社交的な遊びに夢中になることが多く、友達との関係に集中するあまり、親の声が届かないことがあるかもしれません。
男女での違いが生じておもしろいですね。
対策:
この時期は人の話を聞くことを覚える時期。なぜ人の話を聞かなければならないのか。理由をしっかり説明することで話しを聞く意味を理解し、身に付けていきます。
人の話を聞く姿勢を身につけるには、親自身も子どもの意見を尊重し、対話を通じて解決策を見つけることもポイントになっていきます。
また【声を掛けるタイミング】もポイントの一つ。
例えば子どもが約束の時間を過ぎてもゲームをしてしまったとします。
この時すぐに注意するのではなく、その活動が終わった直後、つまりゲームが終わった後に話し掛け、どうして長くゲームをしてしまったのか聞きましょう。
なぜなら、ゲーム中の子どもの頭の中はドーパミン、アドレナリン、セロトニン、ノルアドレナリン、エンドルフィン、そしてオキシトシンなど、さまざまな神経物質が「やりたい!楽しい!」気持ちで盛り上がっています。そんな状態で中断した場合、ドーパミンの急減や集中力の低下による不快感やイライラを感じてしまい、親の話なんて聞きません。
ゲームなどのハウスルールを設ける際は一緒に考えながらリードしてあげましょう。「〇時にご飯が始まるから、ゲームは□時までにしようか。」など、保護者と一緒にルールを考えるのは、子どもにとって良い経験となります。
学童期(6歳~)
学童期になると、子どもは学校生活や友達との関係など、家庭外の世界に興味を持ち始めます。このため、「聞こえないふり」をする理由として、家庭での指示よりも他のことに意識が向いていることが考えられます。
大人でもありますよね。
パートナーや子どもの話を聞きつつ意識がそっちのけになっていたり。
また、この時期の子どもは親からの指示や要求に対して自分の考えや意見を持つことが増えてきます。そのため、意図的に「聞こえないふり」をすることで、親との力関係を試している可能性もあります。
男女の違い:
学童期になると、より男の子は友達との競争やゲームに集中しすぎ、女の子は友達関係や感情的な問題に気を取られ、親の声が届かないことがあるでしょう。
対策:
学童期場合、子どもが自分の意見を持つことを尊重しつつも、家庭内でのルールや責任を明確にする必要があります。
また、親子の対話を通じて、子どもがなぜ「聞こえないふり」をしているのかを理解し、その理由に対処することも大切。
例えば子どもが学校の友達との関係に悩んでいる場合、なにが起きて子ども自身どう感じたのか話を聞き、気持ちに寄り添い、解決策を一緒に考えてもいいかもしれません。
子どもに声が届きやすくなるコツ
「あれ、反応がないな、声が届いていないのかな?」そう思った時に有効な対策を紹介します。
それは話し掛ける時に「ちょっと体に触れること」
よくトントン、と肩を軽く叩いたりしますよね。アレです。
なぜ効果があるかというと理由は3つあります。
- 注意を引く: 子どもが何かに集中しているときや、周囲の音が騒がしいとき、声だけでは気づかないことがあります。軽く触れることで、物理的な刺激が加わり、子どもの注意を引くことができます。
- 安心感を与える: 触れることは、安心感や信頼感を伝える手段でもあります。特に、小さな子どもは親や大人からの触れ合いを通じて、安心感や愛情を感じます。優しく触れることで、子どもは落ち着き、話を聞きやすくなります。
- コミュニケーションの一部: 特に言葉がまだ十分に発達していない子どもにとって、触れることは重要なコミュニケーション手段です。触れることで、「今から話しかけるよ」「君に何か伝えたいよ」といったメッセージを非言語的に伝えることができます。
これはスキンシップがもたらす効果ですが、スキンシップをとることで上記の通り、注意を引き、集中して話を聞けるようになります。
最初のお小言を遠くから言うよりも、直接触れに行った方が効果的なんでしょうけども、母だって忙しいの。家事をしている最中に声掛けすることだってある。
ではそんな悩みに対してはどうするか。
その声掛け自体を減らしてみたら?
声掛けの回数を減らす2つの対策
①自業自得作戦
そもそも、なぜ大人は口うるさく言うのか。
「子どもがするべきことをしないから」
では、あれやこれや言われる側の子どもの気持ちはどうでしょう。
「(自分は言われないとできないんだ…)」
と過小評価されていると感じ、もうダメだ。とやる気をなくしていく。
あれ?
これって自分が望んでいる形?
いつまで経っても言い続けないとダメじゃない?
そうですよね、まさしく負のループ。
親としては子どもが主体的に行動して欲しいですよね。
ちょっと思い返して欲しいのですが、
一日に何回声掛けしていますか?
本当に、その指示は必要かな?
今すぐやらないとひどい弊害を生みますか?
緊急の場合だったり、取り返しつかない結果になりそうなら指示は必要ですよね。
しかし、そうでない場合は指示や命令は逆効果。いつまでも言われたことだけ実行して、自分自身学ばず成長してしまうだけ。自業自得ということを学ぶと、自分で気をつけられるようになります。
まぁ、実際困るのは自分ですからね。宿題忘れたとて、先生や友達に対する交渉術はうまくなるかもしれません。
②「しっかりしてない親」作戦
良く言いますよね。
親がしっかりしていないから、子どもがしっかりする。つまり自分で自分のことを管理できるようになる。
例えば親が子どもの忘れ物に気を配らない場合、子どもは「自分がしっかりしないと困る」と感じ、忘れ物をしないように自分でチェックリストを作ったり、前日の夜に準備をしたりするようになります。
おそらく子どもは最初親に頼らず大丈夫かなぁ…と不安を覚えますが、徐々に自信をつけていきますよ。(トイレトレーニングや自転車に乗る練習の時のように)
自分のことを管理できるようになると責任感が生まれます。
自分の事に関して責任を持てるようになると、それは学校でも家でも反映されるように。
ただし、これはあくまで一部の例であり、全ての子どもが同じように成長するわけではありません。
でも自分でどうにかしようという自立心は共通して育ち、いろんな困難を乗り越えていけるかもしれませんね。
\point!/もしも、より責任感を育てたいなら!
【してもらったことに感謝する】
子どもが日常生活で何か手伝ってくれたら、感謝をしましょう。
「○○してくれてありがとう!忙しくて忘れてたから助かった!」
頼られて感謝されると自己肯定感、モチベーションが向上します。
すると「これを最後まできちんとやれば、嬉しい結果(喜ばれる)が起こる!」と学び、責任持って取り組むことができるように。
是非試してみてください。
③一日のスケジュールとハウスルールを決める
子どもは制限されるのは嫌いですが、ルール作りは好きです。
特にルールを自分で作るとゲーム感覚で楽しめちゃいます。
幼児期と学童期で内容が異なるので、分けて説明しますね!
■幼児期
幼児期はまだ時計が読めないので、「長い針が〇になるまでに片付けて!」と言ったところで、自主的に動くのはなかなか難しい。なのでゲーム式に声掛けをするのがオススメです。
・「早くして!」に有効:時間制限チャレンジ
「このお題を何秒以内にできるか」を競うゲーム。例えば、「10秒以内に5つ片付ける」や「180秒(3分)以内に片付ける」など。まずは親が課題を与え、少しずつ慣れたら子ども自身にもタイムリミットと課題を設定してもらいましょう。
➡ 達成感を味わいながら、時間管理や集中力を養うことができます。
・「早く食べなさい!」に有効:食事の冒険
「今日はスプーンしか使わない」「この色の食べ物は最後に食べる」など、食事に関するルールを子どもに決めさせます。
➡食事の時間が楽しみになり、偏食や好き嫌いを克服するきっかけになるかもしれません。
■学童期
さらに学童期に入れば、ひと通り自分でなんでもできる時期。一緒に一日のスケジュール考えてみることをオススメです。
例えば
7:00 – 起床
- 顔を洗う、歯を磨く
- 着替える
- ベッドを整える
7:30 – 朝ごはん
- 家族と一緒に朝食をとる
- 食器を片付ける
8:00 – 学校へ登校
- 持ち物を確認し、忘れ物がないかチェック
- 家を出る
書き出すことで、自分がやらなければいけないことが明白になり、脳に刻まれます。
書き出したものは目の付きやすいところに貼り付けるとよいでしょう。
我が家の場合、家族会議の議題として取り上げ、さらに細かく書き出しています。
例えば、
・6:40までに食べ終わる
・19:40までに洗濯を回す
その上で、もしも時間を過ぎてしまったら、「お皿は自分で洗ってね。それまでに食べ終わっていれば、ママが洗うよ」、洗濯回すのが遅くなって寝るのが遅くなると明日の仕事に響くから、40分を過ぎるようなら洗濯干すの手伝ってね
と、ハウスルールを設けます。
理由は、時間がない中でも家族での時間を作りたいから。
必ず寝る前の30分は子どもとの時間に充てています。
この時間を子ども達も楽しみにしてくれているので、第一優先で一日のスケジュールやハウスルールを組んでくれ、逆算して時間設定を割り出してくれました。
中には家事を子どもにやらせるのは…と思う方もいるかもしれませんが、子どもがある程度大きくなったら協力関係を築く必要はあると思います。命令しているわけではありませんからね、あくまでお互い同じ目標に対して行動しようと決めたルールです。本当にチームプレイ。
まとめ
いかがでしたか?
結論で言えば、子どもが「聞こえないふり」をする理由は、性別や成長段階によってさまざまです。
しかし、共通して言えるのは、子どもが自分の世界に集中しているか、自分の意志を主張している場合が多いということです。
親としては、子どもの発達段階に応じたアプローチで、優しく注意を促しながら、子どもの気持ちや状況を理解する姿勢が大切です。
また、自主的に動かなくさせてしまっているのは親が原因の場合もあることがわかりました。
本当にその声掛けは必要か、今一度考え、答えが「NO」なら、「しっかりしてない親」に切り替えたり、「ハウスルールを決める」対策もいいかもしれません。
いずれにしても、親子のコミュニケーションを深めることで、子どもが自然と親の声に耳を傾けるようになるでしょう。
参考文献:http://kodomonokikoe.net/wp-content/uploads/2021/02/specialist01.pdf