育児にも貢献!女性に備わってるフェロモンについて

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先日の配信の中で「人間には性フェロモンは存在しない」件について紹介させていただきました。

ただ、それは「性フェロモン」に限って。実際人間のフェロモンはいくつかあるとされています。なかでも有名なのは「女性の生理周期に関するフェロモン」と「親子関係の構築に有効なフェロモン」です。いずれも⽣理的な影響を伴うフェロモンで、出産や育児に影響してくるので、イチ生物として子孫繁栄を叶えるために遺伝子が残したのかなと思うとなんだか神秘的!

今回の配信では子孫繫栄に繋がる4つのフェロモンについてエビデンスを元に紹介させていただきます。

生物学的な解釈でみる、女性の嗅覚とフェロモンの関係

まず前提として知っていただきたいのは、フェロモンとニオイの関係についてです。そもそもフェロモンは昆虫や動物がパートナーを引きつけるために使う特別なニオイ物質です。哺乳類はフェロモンを鼻の中にある鋤鼻器官(じょびきかん)と呼ばれる場所で受けとりますが、人間は進化の過程で鋤鼻器官は退化してしまったそうです。ただし、ニオイと同じしくみでこれらの物質の一部を受容しています。

女性はイチ生物として「子どもを産み育てる」という役割があり、それにはニオイとフェロモンという二つの嗅覚系の機能が重要です。

まずニオイについてお話していきます。例えば妊婦の悪阻(つわり)ですが,これも生物学的には子どもを守るための仕組みだと考えられてます。「たばこのニオイを嗅ぐと気持ちが悪くなる」というのは、たばこに含まれる成分の中には胎児に悪い影響を与えるものがあるから。「生ゴミや魚の腐ったようなニオイが苦手になる」のは、衛生的に問題のある場所を避けるためという意味が関連付いています。

次にフェロモンについてです。今現在多くの研究で取り上げられているのが、「女性の生理周期に関するフェロモンドミトリー効果)」と、「親子の養育行動にも繋がるフェロモン」です。

①女性の生理周期に関するフェロモン

アメリカの研究者のStern と McClintock(1998)の研究により、女性の腋下フェロモンの影響で、女性間の月経周期を「同期化」するということがわかりました。つまり家族や友人らとの同居生活を介して、生理の期間が重なること。そういえば身近な人と生理が重なった経験、ありますよね。

また、新たに「生理を分散化する効果」が見つかっています。
授乳中の女性の胸部の匂いが,ほかの未産婦(妊娠・出産の経験がない女性)の月経周期を乱すのです。理由には諸説ありますが、おそらく妊娠が可能な排卵期の女性がいろんな時期に排卵期を迎えられるよう分散したのではと考えられています。この効果により、なんと出産率を 3 倍高められるだとか。

また、男性の腋下フェロモンも月経周期に影響を与えることもあるそうです。男性の腋下フェロモンが排卵を早め,月経周期を短くし、月経周期の安定化を図っているとのこと。え、そんな所でもフェロモン活躍してるの?計算高っ…!

親子関係の構築に有効なフェロモン

次に親子関係の構築に有効なフェロモンについてお話します。

まず東京大学農学生命科学研究所の刀川 夏詩子さんによれば、新しく母親になった女性は出産経験のない女性よりも良いニオイを好む傾向があるとのことです。

生きてる脳の活性を見る脳機能イメージングという実験を行ったところ、新しく母になった女性と出産経験のない女性が同じニオイを嗅いだ時に、母になった女性の前頭前皮質と呼ばれる脳の領域が より有意に活性化されました。この結果は子どもの写真やビデオ、泣き声などを聞いた時に活性化する領域と一致しているとのことです。

つまり母親になったら良いニオイをより好むようになり、ニオイを通して自然と子どもの変化に敏感になるということが言えそうです。

母親になった女性の嗅覚が敏感になることがわかったと思うので、親子の養育行動にも繋がるフェロモンについてお話していきます。

②母性フェロモン

こちらは赤ちゃんの頭から香るニオイから放たれるフェロモン。赤ちゃんは産後まもないほど、ほんのり甘い香りがしますよね。あれは「ノナナール」有機化合物という有機化合物で、時間の経過と共に匂いの成分は酸化などによって変化していきます。新生児の爽やかで果実のように甘さのある匂いは、日が経つにつれて徐々に穏やかで温かみを感じさせる匂いへと変化していくと言われています。

この「ノナナール」の匂いを通じて、抱いているヒトは心が穏やかになり、ニオイを発する赤ちゃんを愛おしく思うのです。ママよりは効果は低いですが、パパにも有効とのことです。

思う存分嗅ぎましょう。期間限定です。

③母親が攻撃的になるヘキサデカナール

イスラエルにあるワイツマン科学研究所のノアム・ソベル氏らの研究チームは、人間の女性、特に赤ちゃんが放出している「ヘキサデカナール」という無臭の化合物を発見したと報告しています。

「ヘキサデカナール」は皮膚、唾液、排泄物から分泌されていて、特に赤ちゃんは頭から放出していることがわかりました。特徴は、女性を攻撃的にさせ、男性は攻撃的な行動を鈍らせるとのこと。ひぇっ…メンズびっくり。

どのような実験が行われたか説明しましょう。

126人の男女に欲求が阻止される強いフラストレーションを計測するコンピューターゲームをやってもらいました。被験者の半数は「ヘキサデカナール」を練り込んだクリームを上唇につけてプレイします。

被験者は目に見えない相手と交渉しながらお金を分け合うゲームをします。交渉は被験者にフラストレーションを与えるようになっていて、被験者が相手の分け前に全体の90%未満の金額を示すと、コンピューターは「NO!」と真っ赤な文字を表示して被験者の提案を拒否する、というものです。

その後、被験者は同じ実験内容に加えて相手に音をぶつけるゲームをしました。被験者の攻撃性の度合を示すため、「痛みのレベル」を示したボタンを押すことで音の大きさが選択できるようになっています。

結果「ヘキサデカナール」を嗅がされた被験者のうち、女性の19%が平均より攻撃的な行動を取ったのに対して、男性は18.5%以上が平均より攻撃的ではない行動を取ったことがわかりました。

このことから母親は赤ちゃんを守るために攻撃性を発揮する機会が多く、それに対して父親は自分の子孫を攻撃しないように気を鎮める効果がフェロモンを通して出ているのでは?と推測されます。

なるほど、確かに子どもを産んでから夫に対して敵意を感じたのはこれも原因なのかも?(自戒)

④授乳に活躍!おっぱいフェロモン

新生児は授乳中でない女性と比較して、授乳中の女性の胸のニオイをより好み、吸乳反応を増加させていることがわかっています。実は乳輪にあるブツブツ、モントゴメリー腺からフェロモンが分泌されており、このフェロモンのニオイが羊水のニオイにも似ているため、赤ちゃんはこのニオイに惹きつけられるそうです。生まれたばかりでまだ視力の弱い赤ちゃんは乳首の場所が見えません。そこでモントゴメリー腺からフェロモンを分泌することで、赤ちゃんはその匂いを頼りに乳首の場所を探し当てて母乳を吸えるようになります。

逆に言えば、フェロモンの匂いがなければ赤ちゃんは母乳を吸えず栄養補給ができなくなってしまうので、フェロモンはとても大切な役割を果たしていることがわかります。

また、このニオイは胎内から嗅いできた母親の羊水と似ているので、赤ちゃんにとても大きな安心感を与えてくれます。いわゆる「ママの匂い」もここから来ているのでは?という一説もあります。

まとめ

以上母子間の絆を形成する上で重要な4つのフェロモンについてお話しました。

性フェロモンはないものの、母親がしっかりと子を守り育てていく為に必要なものが、我々ヒトにも備わっていることがわかり、なんだか神秘的に感じます。
また赤ちゃん自身も誰かの力を借りて育つためにフェロモンを出している、いち生物として生まれつき凄い能力を持っていますよね。

もしもあなたが赤ちゃんとの未来に不安を抱いていたら、このこのフェロモンの存在を思い出してください。「案ずるより産むが易し」自然と子どもを愛せるはず。フェロモンがあなたの背中を押してくれます。

よりフェロモンの恩恵を受けるには、規則正しい生活や、栄養に配慮した食事、なによりストレスを溜めないことが大切です。

育児に対する肩の重荷を軽くして、今日も沢山嗅いでいきましょう!

参考文献

“Sampling, identification and sensory evaluation of odors of a newborn baby’s head and amniotic fluid” Scientific Reports
“Child odors and parenting: A survey examination of the role of odor in child-rearing”「PLoS One」Okamoto Masako, Mika Shirasu, Rei Fujita, Yukei Hirasawa, and Kazushige Touhara
Sniffing the human body volatile hexadecanal blocks aggression in men but triggers aggression in women

Chemical emitted by babies could make men more docile, women more aggressive | Science | AAAS

・早稲田大学 Laboratory of Plant Physiology http://www.photosynthesis.jp/lec/zengaku2-7.html#:~:text=%E4%BB%96%E6%96%B9%E3%83%95%E3%82%A7%E3%83%AD%E3%83%A2%E3%83%B3%E3%81%AF%E3%80%81%E5%8B%95%E7%89%A9%E3%81%AB%E3%81%8A%E3%81%84%E3%81%A6,%E4%B8%80%E9%83%A8%E3%82%92%E5%8F%97%E5%AE%B9%E3%81%99%E3%82%8B%E3%80%82

・東京大学 農学生命科学研究所 刀川 夏詩子https://www.jstage.jst.go.jp/article/jao/46/4/46_279/_pdf

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