「幼児になっても卒乳していない子」は稀にいます。
体つきもしっかりしており、栄養補給の観点でも授乳の必要はないにもかかわらず、
ふとした時にママの服を捲って、ドリンクバーがてら飲んでいる。
そんな幼児さん、たまにいます。
幼児になってもおっぱいによる授乳を続けることで、子どもやママにどんな影響が出るのか。
なぜ吸いたくなるのか、卒乳するための対策はなにがあるのか、
など詳しく解説していきたいと思います。
そろそろ卒乳した方がいいのでは?という方は是非参考にしてください。
海外が長期授乳を推奨する理由と問題点
WHO(世界保健機構)やUNICEF(ユニセフ)では、2歳かそれ以上まで母乳育児を続けることを勧めています。
しかしこれはあくまで「開発途上国での栄養不足などによる小児の死亡を防ぐこと」が目的です。
先進国であり乳児死亡率が極めて低い日本において、栄養不足に陥ることはほぼありません。
つまり、WHOなどの推奨する理由は日本には当てはまらないと言えます。
日本の場合、幼児になっても授乳を続けてしまう理由で一番多いのは「子どもの精神面への配慮」です。しかし必ずしもおっぱいじゃないと叶えられない問題ではなく、代替案や対策はいくつもあります。加えて授乳を続けることで問題も生じます。
①プライベートゾーンを理解できず、相手を傷つける可能性がある
②虫歯のリスクが高まる
③母子の依存関係が高まる可能性がある
④母親の体力が削られる
次の項でひとつずつ解説していきます。
長期授乳の4つのデメリット
①他人のプライベートゾーンへの理解が遅れる
プライベートゾーンとは「他の人が勝手に見たり触ったりしてはいけない場所」のことです。
大まかに言えば口や胸、性器やお尻のことですね。
他の人ということで、子どもにとって母親も他人。つまりママの胸もママのプライベートゾーン。
授乳に慣れているがあまり、もしも公共の場でいつものように服を捲って授乳されたらどうでしょう。
まず前提として、この行動を取った子どもには罪はありません。子どもにとっては普段通りの行動だから。
しかし吸われる側としては溜まったものじゃないですよね。
突如公共の場で吸われそうになったら、取り乱して子どもの欲求を拒否することだってあります。
自分が子どもなら傷つきません?
また、子どもの興味の対象は母親と同じ性別の保育士さんやお友達のママに向くことも。
保育園でもたまにいるんですよね、急に触ってきて「先生、おっぱいないから男なのー?」と言う幼児。
笑い話になるけど、冷静に考えると危険な話。プライベートゾーンを理解していないからこそ、遠慮なく触る。だってママのおっぱいは触りたい時に触っているから。この子にとってはおっぱいに触れるのは、肩や腕などに触れるのと同じ事。
だけどね、いくら相手は子どもとはいえ、触られた方は不快に感じるの。
「自分の行動で人を傷つける」この事実に変わりはないんです。
そのためにもプライベートゾーンを理解し、胸は容易に触れていい場所じゃないことを親が教えてあげるべきだと思っています。
\ 一口メモ /プライベートゾーンについて学ぶのは3~5歳がベスト!
3~5歳は自分の体に興味が出始める頃なので、プライベートゾーンについて学び始めるには良い頃合いです。プライベートゾーンを学ぶことは、「性教育」に繋がります。人には触れられたくない場所があることがあることを理解し、同時に自分も触れられたくない場所があることを自覚することができます。変質者から自分の体を守る意味でもとても必要な知識です。
ポイント①:プライベートゾーンの場所を知る
人によってプライベートゾーンはそれぞれ異なりますが、主に口や胸、性器やお尻などが挙げられます。水着で隠れる場所というように伝えるとわかりやすいです。
ポイント②:自分で触る分には良いことを伝える
幼児期になると体への興味が高まり、中には軽い自慰行為を行う子もいます。大人はつい触らないように注意しがちですが、自分の体への興味は自然なこと。強く注意すると「自分の体を触ることは悪いことなんだ…」と罪悪感が芽生えてしまします。自慰行為は自然とおさまることがほとんどです。
ただ「人前では触らない事」と公共の場での振る舞い方については優しく説明してあげる必要があります。
ポイント③:他の人のプライベートゾーンは見たり触らないと伝える
自分のプライベートゾーンは大切であるように、他の人にとっても大切な場所。勝手に見たり触ったりしてはいけないことを同時に教えてあげるとよいでしょう。
また、自分がもし体のどこであっても触られてイヤな気持ちになったら「イヤだ」と言えるように伝えましょう。「あなたの体はあなたのもの。嫌な時はしっかり意思表示をすることで自分を守れるよ」と教えてあげましょう。
②虫歯になる可能性が高まる
日本小児歯科学会の発表によると、234名の乳幼児を対象にむし歯の調査をしたところ、卒乳している子は 6.8%、授乳している子は21.9%がむし歯になっていることがわかりました。また虫歯の本数に関しても授乳している子のほうが多く、一人当たりのむし歯の数は、卒乳している小児では 2.56歯であるのに対して、授乳している小児では 3.36歯とのことでした。
授乳をするとむし歯になる可能性が上がり、むし歯の本数も多い傾向が見られました。理由は母乳に含まれる乳糖が虫歯の原因になるから。長期授乳の子は永久歯も生え始める子もいます。虫歯のリスクを考えた上で卒乳を検討してもいいかもしれません。
③母子の依存関係が高まる可能性がある
長期授乳が子離れできない直接的な原因になるとは限りませんが、母親と子どもの依存関係が強まる可能性はあります。
授乳が幼児期を過ぎても続く場合、母親が「まだ求められたいから」と繋がりの一つとして考えて授乳に固執し、子どもが自立するタイミングを逃すケースも考えられます。
④母親の体力が削られる
長期授乳は母親の体力にも影響が出ます。
そもそも授乳は体内の栄養やエネルギーを多く消費するため、母親が十分な栄養補給や休息を取っていないと疲労として蓄積します。さらに母親が「辞め時」について悩むことで精神的なストレスを感じることも。また、授乳中はカルシウムや鉄分などの栄養が不足しがちで、骨密度の低下や貧血につながることがあります。
❁⃘
もしも幼児になっても卒乳しない事を特段問題ないと思うならイチ保育士として止めません。あなたの育児ですから。あなたが築く家庭ですからね。
しかし、もしもあなたが卒乳する時期に悩んでいたり、精神的・肉体的な負担を感じているなら、卒乳をすすめます。
だって成長面では問題ないわけですからね。子どもが求めてるのは別におっぱいじゃなくてもいいんですよ。
彼らが授乳になにを求めているかといえば、【母親から受ける愛情でストレスや不安を取り除きたい】
これが一番の理由です。
それならば、
・愛情の依存先を物に変える
・子どもが抱いている不安やストレスを取り除く
これで解決できるのではないでしょうか。
そしてなにより彼らに必要なのは「母親から受ける愛」
これは欠かせちゃいけません。
彼らは授乳することで触覚、嗅覚、視覚をつかい、大好きな母親を感じているのです。
では授乳と同じように母親を感じられる方法はあるのか。
「スキンシップ」があるじゃないですか。
授乳は人目に付く場所ではできないけど、ハグや抱っこはどこでもできます。
もし不安になったり嫌なことがあったら満足するまでハグしてあげる。
これだけでも両者にオキシトシンが分泌されるので、ストレス解消したり気持ちが落ち着いていきます。親子の関係性は維持できますね?
幼児に向いてる4つの卒乳方法
長期授乳をしている幼児を卒乳させるためには、子どもが安心して授乳から離れられるような計画的な方法が必要です。
精神的に負荷の低い方法を4つ紹介します。
①愛情の依存先を物に変える
母親に向けてたぬくもりの矛先をぬいぐるみに替えてみるのは有効です。ぬいぐるみは眠かったり、甘えたい子どもの心を穏やかにする効果をもっています。
その効果はなんと生死への恐怖を和らげるほど。オランダにあるアムステルダム大学の研究を行った心理学者サンダー・コール氏は、「テディベアのような人形に触れていることで、生死の恐怖が和らぐ」と分析しました。
心理学の分野でも「ぬいぐるみセラピー」が研究されているように、ぬいぐるみは人に癒しをもたらします。「特別なお友だち」としてお店でぬいぐるみを決めさせてあげましょう。
②子どもの不安やストレスを取り除く
子どもは精神的に不安定になるとおっぱいを吸いにきます。ならば根源的な不安を解消してあげられるようサポートしてあげましょう。
おすすめのサポートは十分なスキンシップを図ること。
抱っこやおんぶ、寝る前の読み聞かせなどを積極的に行ってあげると、オキシトシンが分泌されてストレスが減少します。
また、スキンシップを図ることで子どもはなにに不安を抱いているのか、今日なにか嫌なことがあったのか話しやすくなります。その問題を解決できるように話をよく聞いてあげ、一緒に考えることも有効です。
③段階的に授乳を減らす
いきなりやめるのではなく、段階的に授乳の頻度を減らすと、子どものメンタルは少ない負荷で卒乳できます。たとえば、1週間に1回ぐらい減らしてみて、次の週は2~3日に1回ずつ減らしてみるなど、徐々に離してあげましょう。
子どもがおっぱいを思い出さないよう友達と遊ばせたり外で遊ぶと意識を反らすことができます。また喉が渇いた時にも思い出す可能性があるので、こまめな水分補給もコツになります。
\ 一口メモ / 授乳を段階的に減らす例
①卒乳宣言!
「〇月に○○ちゃんの卒乳お祝いをしようね。これからは○○ちゃんだけの特別なカップで飲み物を飲もうか!」「○○ちゃんはもうすぐ4歳だから、ママのおっぱいじゃなくても元気になれるんだよ!だから、これからはおいしいごはんやお水でパワーをつけようね。誕生日がきたらおしまいしようか!」など【いつ卒乳する】か、ポジティブな内容とともに伝えましょう。こうすることで前向きに卒乳に向けて動けるようになります。
②カレンダーに卒乳最後の日に印を付けて、子どもの心の準備を図る
「この日になったらおっぱいとバイバイしようね」と頻繁に伝えましょう。寝る時胸をトントンしたり、マッサージをするなどスキンシップを図ると、おっぱい以外でも安心できることを学んでいきます。
③少しずつ授乳頻度を減らす
1日に1回から2、3日に1回など授乳する頻度を減らしていきましょう。
「あ、そろそろ授乳しに来そうだな」と思ったら、気が紛れるように別の遊びに誘ったり、外に連れ出すことは有効です。
④卒乳の日を迎えたら「これが最後だよ」と伝える
子どもが自分から口を離すまで、待ってあげましょう。片付けなどはある程度済ませて、ママや家族も余裕をもって最後のおっぱいタイムを過ごせるといいですね。
④生姜(しょうが)作戦
おっぱいに生姜を塗り付ける作戦です。
あらかじめ塗っておく必要がありますが、いざ口にすれば「パイ、すっぱい!」といって二度と口をつけようとしない成功例は多く見られます。
まとめ
幼児期の授乳は妥当かどうか。
正直正解はありません。
おそらく基準は「親としてなにを大切にしたいか」
ある人によれば子どもの情緒、ある人によればデリカシー。
育児の方法も環境も多種多様です。
ただ、幼児において「授乳じゃないと解決しない問題」はないのかなと思います。
先進国な上に海外と比べて日本は平和なので栄養不足というのは可能性として低いし、
逆にろくに食事を摂らずに授乳に頼っているようなら、子どもも親も栄養に過不足が生じるので、断乳した方が良いと思います。
授乳は精神的な母子のつながりに母乳の役割は重要と考えられていますが、幼児期になった子どもの精神的な母子のつながりはスキンシップでも図れますし、年齢に合わせた方法へと促してみてもいいのではないでしょうか。
ーー親は子どもが自分の力で巣だって行けるようにサポートする義務があります。
あなたはどう選択しますか?
参考文献:
日本小児歯科学会関東地方会第 30回記念大会(2015)https://www.jstage.jst.go.jp/article/jspd/54/4/54_462/_pdf/-char/en
https://www.juntendo.ac.jp/assets/5-5.pdf
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